〜作詞者からひとこと〜 黒沢常五郎
新屋へ越す山道の草に座って言った一人の老人の言葉を私は思う。「ここから見る眺めはいつもいいもんでなあ」道々この老人の言葉を繰り返しながら私は思った。何の変てつもない初夏の風景の中に老人は、幼い時から数しれない来し方を若葉の鳴る風の中でしづかにかみしめていたのだろうと。
私達誰もがそうであるように生れ育った土地の風物を愛し、人間を信じ、この地域のよりよくなることを願わない人はないと思う。
私達の作る歌もそう言う心が元になっていると思う。だが、中々気に入ったものはできない。
私は幾年か後、この音頭よりもっともっと優れたのを誰かつくってくれるといいと思う。骨折って誰かなしとげたものを更に心をこめて深め育て、よりすばらしいものを作り出す作業は地方文化の特色といってよいのではあるまいか。
又、そういうたのしい社会がわたしたちの願いである。