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■新聞記事から
《ちいきアイ》 研修団派遣や語学講座 甘楽町と伊・チェルタルド市
（1993,04,11上毛新聞地域）
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甘楽郡甘楽町が、イタリア・トスカーナ州のチェルタルド市と友好親善姉妹都市提携を結んで、今年十月で十周年を迎える。これまでに四回にわたる中学生国際交流研修団の派遣や青年使節団の受け入れをはじめ、イタリア語講座の開設、絵画・写真展の開催、国内で唯一のチェルタルドワインの販売など、積極的な交流を図ってきた。特に今年は、十周年を記念して芸能使節団の派遣やチェルタルド市ゆかりの画家の作品を集めた絵画展、記念誌の発刊、茶室の寄贈などの事業を計画。地道な活動が大きく花開こうとしている。財政規模の比較的小さい自治体が国際交流事業を継続するのは全国的にもまれで、この十年の歩みを振り返ってみた。
（富岡支局 古沢 良文記者）
昭和五十八年四月、県主催の「ふるさと巡回サロン」が同町で開かれた。この時、講師として招かれたイタリア人ジャーナリストが、城下町という歴史的環境や人口規模が似ていることから、チェルタルド市との姉妹都市提携を提案。以来、文書を通じ準備を進め、同年十月十九日、町の使節団がイタリアを訪問、同市のプレトリオ宮殿で正式に調印した。
これまで、使節団の派遣と受け入れ、計四回総勢八十人におよぶ中学生国際交流研修団の派遣を軸に活発に交流。昨年は、初めてチェルタルド市の青年使節団が来町。名実ともに相互交流が実現した。
第二次交流研修団に参加、現在は町税務課に勤める斎藤広美さん（１９）は、甘楽二中三年だった当時の報告記に「親切にしてくださったチェルタルドの人は、それが身についているのだと思う。チェルタルドの人が甘楽町へ来たら、私も親切を身につけて快く迎えてあげたいとおもいます」と記している。
この体験を機にイタリアの言葉と文化に興味を持った斎藤さんは、高校二年の秋から町のイタリア語講座にも参加。「関心を持つのは参加した一部の人だけ。もっと町の人が直接ふれあえるようなレベルでの交流が望ましい」と注文も忘れない。
提携の五年後に設立した町国際交流振興協会の飯塚皓允会長は「参加する子供たちはみな初めてのホームステイを経験する。若い時の異文化とのふれあいは何よりの刺激」と事業継続の必要性を強調する。
▽イタリア語講座を開講
提携を契機に文化面でも交流事業が進んでいる。その一つがイタリア語文化講座の開講だ。研修団の同行通訳も務めている外務省研修所講師で、ＮＨＫラジオイタリア語講座でも活躍する一ノ瀬俊和さんを講師に昭和六十年から毎年、定期的に開講。今年も十六日から来年一月まで、週一回のペースで開く予定になっている。
▽ボッカチオ記念作品展も
町制三十周年を迎えた平成元年には、チェルタルド出身の作家・ボッカチオ作の「デカメロン」に登場する人物や場面を、現代イタリアのアーチストが描いた「ボッカチオ記念絵画展」を町公民館と東京で開催。二年前にはチェルタルド市視覚芸術研究所長、ファビオ・カルベッティ氏の個展を町、富岡市、東京、横浜の四カ所で開くなど大きな成果を挙げている。
このほか、昭和六十年から始めたチェルタルド市特産のワインの輸入事業も軌道に乗った。全国でも町物産センターだけでしか販売していないという稀少価値が観光客らに好評で、年間四千本を売り上げている。
これらの事業が思わぬ経済効果を生んだのが、同町白倉へのパスタ製造会社「コルノマカロニー」の進出。同社はイタリア・ブライバンディ社製のスパゲティ製造機と、ビューラー社（スイス）製のマカロニ製造機を各一ライン設置。先月からスパゲティを月産六百トン、マカロニを同三百五十トン生産。町では、今年のチェルタルド市青年使節団受入れの際、イタリア料理教室の開催を企画しており、これに同社のパスタを利用することを検討している。
▽１０周年で茶室を寄贈
十周年を迎えた今年の交流事業の目玉は、国際交流振興協会が企画した茶室の寄贈。建設地は協定を結んだ記念の地・プレトリオ宮殿の中庭と決定しており、寄金の集まりも順調という。また、町は能や日本の食文化を紹介する芸能使節団の派遣、チェルタルド市ゆかりの画家の絵画展、陶芸展、記念誌の発刊や記念講演などの特別行事も企画しており、これを契機に新たなステップを踏みだそうとしている。
富岡秀世町長は「国際交流は継続が一番大切」と今後の友好関係維持を強調。さらに「既に工業研修生を受け入れている中国・ハルビン市やニュージーランド、カナダなどの英語圏との交流も広げたい」と第二、第三の国際交流に夢を広げている。
◆チェルタルド市◆
イタリア共和国トスカーナ州フィレンツェ県にあり、首都ローマと商都ミラノの中間に位置する。人口約一万六千人、面積は約七十三平方キロメートル。イタリアが生んだ代表的作家ボッカチオ生誕の地として知られ、中世の家並みが続く赤い城壁に囲まれたチェルタルドアルトと呼ばれる旧城郭地域が丘の上に広がる。ふもとには新しい市街地とオリーブやブドウ畑が広がっている。ワインの産地、額縁、靴、ガラスなどの製造工場が多い。
(c) JOMO SHINBUN 記事提供 上毛新聞社 禁転載
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