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■新聞記事から

《地域アイ》 甘楽町秋畑の那須地区 特産ソバの町おこし2年目に突入 
行事とセットで誘客作戦

(1997,09,17上毛新聞地域)

 甘楽町秋畑の那須地区で、特産のソバを使った町おこしが進められている。過疎と高齢化の集落の挑戦は二年目を迎え、今年五月にオープンしたそば処(ところ)「那須庵」は八月末までにそばを食べた人とそば打ちを体験した人が合わせて三千七百人に達した。昨年に続き、今年八月にスタートを切った「そば作り入門講座」も募集枠を二倍に広げたにもかかわらず、満杯になった。今後は稲含山登山や伝統の那須の獅子舞などの行事と組み合わせて繰り返し人を呼び込めるか、地元の人たちに十分な収益が還元されるかなどが課題となっている。
(富岡支局 斎藤雅則)
◎人出不足で遊休農地
 那須地区は戸数百六戸、四百人ほどが暮らす山間の集落。武者行列などで知られる甘楽町の中心部、小幡から車で二十分ほどの距離にある。
 産業は農業が主で、傾斜地だけの悪条件の中、同地区の方言で「ちぃじがき」と呼ばれる小さな石を積み上げた石垣に守られた段々畑で、ソバやコンニャク、菊などを栽培している。
 十年ほど前には戸数百十五戸、五百二十人ほどが生活していたが、高齢化と過疎化が進み専業農家も減少。併せて美しかった「ちぃじがき」の段々畑も人手不足から荒廃が進み、遊休農地が目立つようになった。
 この状態を打破しようと、特産のソバによる町おこしが、同町と住民が協力して昨年から始まった。かつてはほとんどの家庭に、ソバ粉をひく石臼(うす)があり、そばの名所だった。
 ソバによる町おこしのきっかけは昨年、県から「ちぃじがき」が評価され、「美しい農村景観保全事業」の推進地区に選定されたため。「草ぼうぼうの『ちぃじがき』をソバでよみがえらせよう」と、地元の人たちによる「美しい農村景観保全事業推進協議会」(浅香春一会長)を発足させた。
◎種まきから試食まで
 第一弾として、地元のお年寄りらのそば名人を指導者とする「そばづくり入門講座」を企画。ソバの種まきから、花見、収穫、そば打ち、試食までが楽しめ、ソバ粉の土産付きという内容。
 昨年は四十六アールの土地を開墾。一アールを一区画とし、一万円で参加者を募集したところ、県内外から応募があり、瞬く間に定員となった。八月に開かれた開講式で、浅香会長は「稲含の神様もこんなに大勢の人たちが来てくれてびっくりしてるだろう」とあいさつ、順調に滑り出した。
 参加者の動機は「そばが好きだから育てるところからやってみたかった」「ソバづくりを通して家族の絆(きずな)を深めたかった」「そば名人との交流が楽しみ」など、さまざまだった。
 一方、那須の人たちには「人が集まるか」「来てくれた人たちが楽しんで帰っていってくれるか」「労力だけで町おこしにつながるか」「自然や環境面は大丈夫か」など、不安や心配があった。
 「とにかくやるだけやってみよう」。後押ししたのは町の農林課職員だった。同町は東京都北区との交流事業や、城下町の風情を色濃く残す小幡など町の歴史や文化などを生かした観光客誘致に積極的に取り組んでおり、成功させている自信がある。「那須の人たちの一見ぶっきらぼうだが厚い人情と、開発の手が全く入っていない自然、長年各家庭で守られてきた自家栽培のそばの味。手探りの中にもいけるという思いがあった」。
 この予想が的中し、昨年の講座はほとんどの人が休むことなく、ソバの栽培に取り組んだ。参加者同士の触れ合いも生まれた。一面に咲く白いソバの花見では、地元の人たちが近くの山で捕獲したイノシシを鍋(なべ)にして振る舞った。
◎里づくりに那須庵開業
 動き出したそばの里づくりは、今年五月三日に開業した「ちぃじがき蕎麦(そば)の館・那須庵」につながった。地元産のソバ粉にこだわり、ざるそばを提供するのと、そば打ちの体験指導をするのが二本の大きな柱。県と町が建設費を補助した。
 原則的に那須庵は土曜と日曜日に営業。そば打ち体験はウイークデーに受け付けている。ざるそばは七百円、そば打ち体験は一人千円。調理や指導に当たるのは地域の主婦二十二人でつくる「ちぃじがき蕎麦の館運営委員会」(田村ハル会長)。
 那須庵には順番を待つ長い行列ができることが多い。「おいしいそばを食べてほしい」との思いから、注文を受けてからそばを作り出す。やっと席についても三十分はたっぷりかかる。「田舎だからのんびりしている」と待ちくたびれる人もいれば、相席になった人たちとそば談議を交わす人たちなどさまざまだが、「お待たせ」と運ばれてくるそばに箸(はし)をつけると、満足そうな顔が広がる。
 そば打ち体験の人気も高い。県内だけでなく、東京や埼玉からもやってくる。すでに十二月まで予約も入っている。夏休みの始まった七月末には東京の中学生百二十人が訪れた。一度に四十人までしか受け入れられないため、三班に分かれてもらい、同町のふるさと館での繭人形作り、下仁田町でのこんにゃく作りと組み合わせて行った。
 町の関係者らは、大口の受け入れ態勢やリピターの獲得などが課題と考えており、コンニャク栽培の盛んな下仁田町など周辺市町村との連携や、地元に伝わる那須の獅子舞など地域色豊かな行事とそばを組み合わせていく方向を模索し始めている。
 また、地元のそば名人からも「人が集まり順調に進んでいるが、高齢者福祉など先行きに対する不安も多く、病院に通うタクシー代ぐらいは安定して得られるようでないと、実質的な町おこしにならない」の声もある。
 「そばづくり入門講座」は今年も八月に開講。昨年の四十六区画から九十二区画に増やしたが、募集開始後間もなく埋まり、そのうち十八区画は昨年と同じ顔触れだった。浅香会長らは「那須庵も順調なため、那須庵で使うソバ粉を生産する農家が増え、これまで広がる一方だった遊休農地がソバ畑に変わっている」と話している。
 そばの里づくりの挑戦は始まったばかり。入門講座に今年初めて参加した館林市大街道、鉄工所経営、高木正一郎さん(60)と妻の光子さん(60)は「那須の民宿に泊まったり、帰りに甘楽町にあるお風呂(ふろ)などに寄っていくのも楽しみ」と、自ら那須の魅力の発見に努めているが、今後は那須や周辺の魅力を知り尽くしている同町がどう積極的にPRに当たるかが「そばの里」定着のカギを握っている、と言えそうだ。

(c) JOMO SHINBUN 記事提供 上毛新聞社 禁転載

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